巨樹を訪ね歩く旅のきっかけは「水」でした。アメリカで2年ほど川下りのガイドをしていたことがあります。とにかく川が好きで、いつも川にいるので「川ねずみ」とあだ名されていました。魚をつったり、川に潜ったりしながら、こんなきれいな水がどこからくるのだろうと、いつも不思議でなりませんでした。あるとき、川に流れ出す沢をどこまでも上ってみました。どこまでも沢づたいに行くと、そこにはうっそうとした森があり、大きな木がいたるところに立っていました。足元には冷たい水が懇々と流れていました。「川は森から生まれる」それが私の原体験となりました。

日本に帰り、川の原点である巨樹をめぐる旅を思いつきました。巨樹を訪ね歩けば、川に出会えるだろうと思ったのです。巨樹の絵を描いているうち、私はどうしても根っこに興味が行ってしまう自分に気づきました。大きな幹を支えるためにどれくらいの根を伸ばしているのか、想像もつきませんでした。「なぜそんなに長い間、同じところで根を伸ばしているのか。あなたにとって生きるとは何なのか」そんな問いを何度も投げかけていました。

「川は森で生まれ、森は土を守り、土は水や大気を浄化させている」

それが、この旅を通じて私が森から教えてもらったことでした。「水と土と緑の物語」は、川や森との対話のなかで生まれた私の「気付き」をまとめたものです。

水と土と緑の物語

森の思想―その1 雑木林

森の思想―その2 水田

森の思想―その3 林業

緑のダムとコンクリートのダム

           
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