森の思想―その2 水田

「水田」もまた、雑木林とともに森の哲学と通じています。

ひとの体は70%が水でできています。海での活動と違い、水分の供給を雨に頼っているわたしたちにとって「陸地に水を留めておく」ということはとても大切なことなのです。

日本人の知恵・田んぼ

水田はたくさんの水をためるので、貯水池の役割を果たしています。水田にたまった水は少しずつ地下へ流れ、やがて川へ注ぎます。この点では水田はダムと非常に似た役割を果たしています。しかも他流に水を供給する間にお米まで作っているので、効率としてはとても良いのです。

山村には、山の斜面に石垣を高く積んで、ちいさな段々の水田を作っています。それを「棚田」を呼んでいます。紀伊半島では石垣の間にお茶の木を植えているところもあります。あぜにはかえるや蛇やたくさんの昆虫・動物が集まっています。夏には蛍が夜空に飛び交います。それらは日本人の自然観を養いました。わらは編みこんでわらじにしたり、傘をつくったり、縄をつくったりしました。害虫であるイナゴは関東では佃煮にして食べています。日本人は水田を大切にしてきました。「たわけ」とは「田を分ける愚かなもの」からきています。

水を守るために森を育て、水田に水を蓄え、雑木林から肥料を確保する。すべてが自然と共に生きる日本人の知恵だったのです。

カエルが消えた田んぼ

最近、水田に異変が起きています。水田の生き物たちが減っているのです。お百姓さんに話を聞くと、泥をひっくり返したときに虫がいなくなり、土が固くなったといいます。これはおそらく農薬のせいでしょう。土をつくっているのは微生物や昆虫たちであり、彼らがいなくなれば土はやせていきます。土がやせると収穫量が減るのでもっとたくさんの農薬をまくという悪循環がおこっています。

また米の価格を守るため、青田刈りや減反が盛んに行われています。水田は底から水が漏れないように薄い泥の膜を張っています。けれども放置された水田は雑草が生え、根が膜を破ってしまうのです。一度放置された水田を元に戻すのは簡単なことではありません。

米の収穫量は減っているのですが、それ以上に日本人が米を食べなくなりました。朝はパンを食べ、昼はラーメンを食べ、夜はたくさんのおかずとビールがあります。だから米が余って困るので、どんどん水田が減らしています。

日本の食料自給率は27%です。これから起こるといわれている食糧危機に対する備えは、この国では十分ではありません。

わたしたちはこの問題にいち早く対策をとる必要があるのです。

 


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