S K E T C H B O O K
       

「木との対話」をテーマに、日本全国の巨樹の絵を描いて旅をした。北は北海道のサロベツ原野から、南は西表島のマングローブまで、2年がかりの旅であった。

木と人は、はたして心を通じ合わせることができるのだろうか?そもそも木に心などあるのだろうか?

木は言葉など話さないし、私に特別な能力があるわけでもない。ただ私にできることは、じっと木の前に座り、木の下で飯を食い、夜をともにし、何日も何日も木と付き合うことだ。

ひとりきりで何日も森の中にいたせいだろうか、不思議な体験を何度もした。木に語り掛けられたり、逆に追い払われたり、鳥に導かれたり、風に慰められたり…。きっと肉体的・精神的な疲労からくる幻覚や幻聴だったのだろう。でも私はそれを木からのメッセージだと思っている。

森の中で何日もいるときの私には、木も鳥も空気も水も、すべてが多いに歌い、語り踊るようだった。彼らは私の心に常にいたし、私自身も彼らの一部だと感じていた。木との対話とは、自分自身との対話でもあったのかもしれない。

そんなふうに木と対話しながらできたのがこれらの作品だ。気に入った木があれば、ぜひたずねていただきたい。

 

 

           
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