水と土と緑の物語

海で命が生まれた

いまから46億年以上も前、地球が生まれました。生まれたばかりの地球はガスのかたまりでした。どろどろの溶岩の塊だったこの星には、太陽系のほかの惑星と同じく、生き物はいませんでした。

6億年ほどたって、地球に変化が現れました。大気中に水蒸気があつまって、雨がふりはじめたのです。何千年も何万年も雨が降って、地球の温度は下がりはじめました。降った雨が集まって海ができました。海の誕生が、この星に命を吹き込むターニングポイントとなりました。

当時の海の温度は150度。ものすごい高温でしたが、生命はそんな海の中で誕生しました。いまから37億年ほど前のことです。

命が陸に上がるまで

海の中で、命が生まれました。私たちの祖先です。しかしまだ陸地に上がっている命はありませんでした。有毒な紫外線が海の外には降り注いでいました。陸地は岩だらけで、水を得ることができませんでした。そこで海の生き物たちは、乾いたスポンジのように自分の体に水を吸い込ませることをはじめました。海岸に打ちあがった藻や海藻にまた別の生き物が重なって足場を作りました。その足場を手がかりに別の生き物が生まれ、それを土台にまた別の生き物が生まれました。生き物たちは自分の体を重ねながらゆっくりとゆっくりと陸地に這い上がっていきました。生き物の死骸はやがて土になりました。

土を守る植物

長い時間をかけて、生き物たちは陸地を土で覆っていきました。土は1,000年でたった1センチしかできません。微生物が少しずつ植物を分解しながら陸地を覆うことによって、水がたまるようになりました。しかし困ったこともありました。それは雨です。雨は生き物たちに必要なのですが、空から降った雨はせっかくつくった土まで一緒に海へ流してしまいます。なんとか土を守らなければ。そこで生まれてきたのが植物たちです。

地衣類やコケ類から発達した植物たちは、長い根を土の中にめぐらせました。根が網の目のように張ることによって、土は流れることなく、雨だけがその隙間を流れます。植物たちが集まって森になりました。森ができて土は守られました。水を確保するために生まれた土、その土を守るという大切な使命を森はまかされたのです。

植物の手足となるためにわたしたちが生まれた

土を守るために根をはるという大きな決断は、植物たちに大きな重荷を背負わせることになりました。根があるために植物は動くことができなくなったのです。どんな環境であろうとも一度そこに根を張ったら、もう動くことはできません。それは生きていくにはあまりに過酷な使命となりました。せめて自分たちの子供を遠くへ運び、使命を果たしてほしい、そういう願いをかなえるため、昆虫や動物たちが生まれました。

昆虫や動物たちは、受粉を手伝ったり、種を遠くに運んだりします。動くことのできない植物たちの手足になって、昆虫や動物は森を広げています。私たちは森を広げる生き物たちの子孫なのです。

田畑を耕すようになってからも、私たちの祖先は、水と土と緑の物語を、長い間受け継いできました。木を守り、水を大切にし、土をつくりつづけてきました。それが生きていくための大切な使命であると知っていたのでしょうか?

すべては水のために、水を蓄える土のために、そして土を抱える森のために。

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